白鳥はどこにいるのか? ~スピッツ「スワン」感想

「スワン」はスピッツの14thアルバム「小さな生き物」の11曲目に収録されています。

   アルバム後半にアコースティックな音が響き出したら、それが「スワン」です。
   アコギのストロークも、跳ねたようなアルペジオも優しく心地よい。
   歌の内容は切ない悲恋ものですが、暗くはないです。無理の無い程度に力強い歌詞は聴いていると拳をキュッと握りしめたくなります。
   ポジネガのバランスの良い曲だと思います。

   ところで、歌のタイトルが「スワン」ということで「白鳥」なのですが、歌詞のなかには白鳥は出てきません。鳥も羽も出てこない。
   いったい白鳥はどこに隠れているのでしょうか?

1.メロディの中に隠れている

   メロディやサウンドがそこはかとなく白鳥っぽい。
   アコギから始まって音が段々厚くなっていき、間奏で盛り上がっていく感じが、水面に浮かぶ白鳥が徐々に羽を広げてやがて空へと舞い上がっていく様を表現している……ような気がしませんか?

2.渡り鳥として隠れている

   Aメロの「星空を見るたびに思い出す さよならも言えないままだった」という歌詞が、渡り鳥っぽい。
   旅先で出会った女の子に別れを告げられないまま次の土地へと旅立ってしまい、胸にはひとかけらの後悔が残る。
   新しい土地で星空を見上げて、この同じ空の下であの娘もいま同じように星を見ているのかなぁと夢想する。
   白鳥も渡り鳥なので、なんとなくそれっぽい気がします。

3.白鳥座に隠れている

「星空」「君は光」「ずっと同じ消えない」という歌詞から、白鳥座のことを指している。
   白鳥座は夏の星座だし、「森が深すぎて」という歌詞から想像する季節も夏なので、季節感も合っています。

   あれ?最初からこれだけ書いておけばよかったじゃん、ってくらいすっきりと腑に落ちてしまいました。


   とはいえ、何が正解ということもないと思うので、どこに白鳥が潜んでいるのか想像しながら、たまには目を閉じて耳を澄まして聴いてみるのもいいかも。と、ちょっと思いました。