雪の下に籠る虫の気分で ~スピッツ「ただ春を待つ」感想

「ただ春を待つ」はスピッツの8thアルバム「フェイクファー」の8曲目に収録されています。

   正直にいうと、長い間、この歌は7曲目の「スーパーノヴァ」と9曲目の「謝々!」の間の曲として聞き流していました。
   スーパーノヴァはかっこいいし、謝々!は名曲だし。どうしてもその間にある「ただ春を待つ」は影が薄くなってしまいます。
   また4分の5拍子というのもちょっと苦手でした。

   この曲をよく聴くようになったのは今年に入ってからです。
   今年は僕が住んでいる北陸は大雪に見舞われました。1月と2月にドカッと雪が降って、家の前が完全に雪で埋もれてしまい、半日かけて雪すかし(雪かき)をしました。
   疲れて家に入って暖を取って休憩したら、昼食を食べて、午後から出勤です。いつもは自転車ですが、このときばかりは歩きです。歩いて会社に行って、午後から半日仕事をしてまた歩いて帰って、風呂に入って、ヘロヘロの状態でビールを飲みながら部屋で聴いていて、「ああいいなぁ」と思ったのが、「ただ春を待つ」でした。

   夜、部屋にいて音楽を聴いていても、外で雪が降る気配が寒さや風の音とともに部屋の中に忍び込んできます。
「ただ春を待つのは嬉しくも哀しく」という歌詞を、冷たい雪の下の更にその下の土のなかに籠るになった気分で聴きました。
「遠い明日」「こらえ切れず」「雪解けの上で」ーー大雪のおかげで、どの言葉もこれまでになく心に響きました。なにせ気分は雪に埋もれたちっぽけな虫ですから。

   そして、周囲を雪に囲まれて、上空を寒波に覆われた状況にいると「強がりでワガママなあなたにも届いたなら」という歌詞の「あなた」が雪を運んでくる冬将軍のことのように思えてきます。
  どうぞ早くお帰りください!!ーーって、全然気持ち届かなくて、2度も大雪降らされちゃいましたけどね。
   来年はどうぞ平年並みでお願いします。ーーえ、「夢の夢」とか言わないで!泣