森見ワールド全開!! ~映画「夜は短し歩けよ乙女」感想(DVD/Bru-ray)

   原作小説も大好きな「夜は短し歩けよ乙女」の映画を観ましたので感想を書きます。
   致命的なネタバレはしませんが、内容には少なからず触れています。

   僕が買ったのはBru-rayの通常盤です。お財布事情が厳しかったので初回特典版は断念しました。
   中身は円盤とポストカードセットと至ってシンプルです。ポストカードはキャスト4人が選んだお気に入りのシーンということだそうですが、ヘンテコなものばかりです。もっとかわいいシーンやおしゃれなシーンはなかったものか。まあこれはこれで好きですけど。
Blu-ray通常版の中身

原作も好き、映画も好き

   映画の時間は約90分です。原作小説一冊分をギュッと凝縮して、うまくまとまっていたと思います。
   また、先輩の堅苦しいようで軽妙な語り口、へんちくりんな世界観と登場人物、黒髪の乙女の好奇心旺盛で可愛らしいところなど、原作小説の特長といえる部分が、とても上手に映像化されています。
   簡単にいって、楽しい映画です。娯楽として最高な出来栄えです。

長いようで短い夜

   小説から映像になったことで、最も変わった点は、原作では春夏秋冬で4つに別れていた話を全てたった一夜にまとめてきたところです。なんと、一夜の間に季節が変わり場面も変わっていきます。
   時系列というか、時間の進み方がでたらめなのが不思議でおもしろいです。例えば、ラスト(冬)に近づくにつれ登場人物が一人ずつ風邪を引いていくのに、最初のシーン(春)でお酒を飲んで夜の街を歩いていた新郎新婦が三幕目(秋)でもまだ酔ってさまよっている。このでたらめ感。カオス、カオス。
   いちおう、この時間の進み方のズレについては、ファンタジー装置としての説明もあるので、それほど違和感はないです。
   ずっと同じ夜なので話の流れが分断されることなく、矢継ぎ早に展開されていくため、飽きないし、面白さが止まらない。上手いやり方だと思います。
   また、夜といっても、画面が暗くなりすぎることはなく、カラフルで陽気です。そして、ずっと夜だからこそ、夜が明けた後のエンディングもさわやかで明るく映ります。

惜しいところも

   次に、ちょっといまいちだった点も書きます。
   全体的に原作の世界観を楽しく映像化していて、原作好きな自分も非常に満足なのですが、全部観終わってみると、原作では、1話ごとに少しずつ先輩と黒髪の乙女の距離が縮まっていったのが、映画では3話(秋)まで来てもほとんど距離が縮まらない。なので、4話でいきなり二人が接近して良い感じになったように見えてしまい、違和感がありました。
   また、3話の学園祭はゲリラ演劇のミュージカルパートの配分が大きすぎて冗長に感じられました。
   あと、これは自分の理解力が足りないのかもしれませんが、ラストの先輩の脳内会議に黒髪の乙女が乱入していくシーンをどう解釈していいのかがわかりませんでした。
   そして解釈がわからないから、無数の先輩VS黒髪の乙女という対立構造がやりすぎに見えてしまいます。まあ、アクションシーンとしては楽しいので気にせず見ればいいのかもしれませんが。
   そんなわけでいくつか引っかかるところもあり、完璧にはちょっと足りない。惜しいです。

まとめ

   映画を人にお勧めするかどうかの一つの基準は、自分がもう一回その映画を観るかどうかだと思うのですが、その意味では、おすすめと言っていいです。たぶんもう2,3回は観返すと思います。気楽に見れて楽しいですから。

   原作が好きな人も、原作読んでないけど気楽になんか観たいという人も、ぜひ一度観てみてください!

   最後に。先輩がやぶれかぶれに叫んだ「同じ阿呆なら踊る阿呆だ」は気持ちのいい名言。