こっそりノートに書いた落書きは ~スピッツ「ラクガキ王国」感想

「ラクガキ王国」は3枚目のスペシャルアルバム「おるたな」の3曲目に収録されています。
   爆音のギターが気持ちいいロックナンバーです。特に間奏のギターソロが最高です。スピッツじゃないみたいに(!?)かっこいい。

   変わったタイトルですが、どんな歌かはサビの歌詞を見ればすぐにわかります。「教科書のスミッこのラクガキが 強大な王国になりました」ーー教科書やノートにラクガキをしたことのある人なら、この歌詞を読んだだけで「あ、楽しそう」と思うのではないでしょうか。

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   学生のころはよくノートの隅っこに、好きな歌の歌詞を書いて、退屈な授業を乗り切ってました。書いていたのは主にスピッツや徳永英明でした。
「チェリー」や「空も飛べるはず」などのシングル曲はもちろんですが、「あじさい通り」のようなアルバム曲の歌詞も書いていたように思います。徳永英明の歌だと「レイニーブルー」や「壊れかけのRadio」を書いてました。というか、たぶん忘れているだけで、もっとたくさんいろんな歌の歌詞を書いていたと思います。

   最初はノートの羅線の外だけだったのが、どんどん広がってきて、本来黒板を写すために使う羅線の内側にまで歌詞が浸食してきて、しまいには見開きのノートの片側1頁が全部スピッツや徳永英明の歌詞で埋まるということがよくありました。
   1週間後の授業のときにノートを開くとページの半分がスピッツの歌詞で埋まっていて「なんじゃこりゃ」って驚いたり、試験前に友達にノートを貸したら、スピッツの歌詞ごとノートをコピーされてちょっと恥ずかしい思いをしたり。

   なんでそんなことをしていたのかはよくわからないのですが、なんとなく授業中にこっそり、黒板を写さずに別のことをやっているというのが、プチ悪な感じで楽しかったんでしょうね。それに、個人的に好きな歌詞をノートに書くことで、みんながいる公共の場に小さなプライベートな空間を作っているようで、ちょっと気分がよかったのかもしれません。強大な王国を築くまでには至りませんでしたが。

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   そういえば、ある日、授業が終わると、後ろの席の友達がスピッツの歌詞の虫食い問題をノートに書いて見せてくれたことがありました。
   当時の僕はようやくスピッツを好きになり始めたころだったので彼が出してきた3問のクイズのうち1問しか解けませんでした。
   今思うと、解けなかった2問のうちの1つは「青い車」のAメロの歌詞だったような気がします。たぶん、虫に食われていた部分(=答え)は「冷えた僕の手が君の首筋にかみついてはじけた朝」の「僕の手」だったんじゃないかな。
   20年も前のことなので、今となっては答え合わせもできない話ですが。