mol-74「越冬のマーチ」感想

   CDの売り上げ貢献と、地元のCDショップの衰退防止のために、ささやかではありますが、毎月一枚以上はリアル店舗でCDを購入しています。
  7月は、mol-74のライブ会場で「越冬のマーチ」を購入しましたので、それを紹介します。
mol-74「越冬のマーチ」

mol-74「越冬のマーチ」

   今から2年前の2015年に発売された3枚目のミニアルバムになります。また、mol-74初の全国流通盤だそうです。
   夏だというのに、冬をテーマにしたアルバムなんて聞いていられるかと最初は心配になりましたが、北国の冬のような重く暗い雰囲気はほとんどなく、どこか軽やかでひんやりとしていて、清涼感があり、夏に聴くのにちょうどいいアルバムでした。

曲ごとの感想

1. La
   インスト曲です。

2. グレイッシュ
   先日の金沢ライブのときも(たぶん)歌っていました。後半にかけての盛り上がりは圧巻です。すごい。
   雪という単語は出てきませんが「淡い理由」や「積もる思い」など、雪に結び付く言葉が散らばっていて、静かな冬の夜を想像して、切なくなります。「届かないまま積もる想いはいつか忘れてしまうでしょう」というサビが、胸に痛い。

3. ヘールシャム
「夜になる前に」「春になる前に」と歌うサビが耳に残ります。2曲目同様、疾走感もあり、気持ちのいいメロディです。歌詞は「自由なんてないこと、分かってた」なんて歌っているので、心地よいどころか、むしろ痛みを伴いますが。

4. 呼吸
   2,3曲目がアップテンポだったので、4曲目は少しスローな曲です。ささやくようなAメロから胸を裂くようなファルセットのサビ、更に大サビへとつながる曲構成がぞっとします。

5. アルカレミア
「アルカレミア」とは不思議な響きの単語ですが、血液の状態を表し、血液のphが基準値よりもアルカリ側に傾いている状態のことらしいです。それが歌の歌詞とどう結びついているのかはわかりませんが。「もう遅い」「まだ間に合うならもう一度」という歌詞が行き過ぎた状態をさしているのだとしたら、その辺と関連しているのかもしれないですね。

6. 赤い頬
   スローな曲が2曲続いた後のアップテンポな歌です。2,3曲目同様に、ライブで聴きたい曲です。イントロで流れているキーボード(?)の音が、印象的です。雪原に吹く風の音に聞こえなくもないです。サビの「涙は涸れることを実は知ってて」という歌詞が好きです。

7. 冬の海とスーベニア
「波に投げたビンの中に 昨日までの私たちのことを書いて入れた」という歌詞が古い異国の映画を思わせます。趣きのある曲です。

8. アンセム
   他のどの曲よりもドラムが力強くダッダッダダっと響き、サウンドとメロディには前へ前へと押し進んでいく強い意志が宿っているようです。「君に新しい朝を」という歌詞で締めくくっており、冬を越えて、かすかな春を感じさせてくれます。

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まとめ

   8曲中、インストが1曲、アップテンポな曲が4曲、スローな曲が3曲ということで、曲構成のバランスもいいです。重くなりすぎず、悲しさや切なさを、淡い美しさにうまく昇華していて、「冬」をテーマにしてますが、オールシーズン聴けるアルバムに仕上がっています。
   おすすめは「グレイッシュ」「ヘールシャム」「呼吸」「赤い頬」です。

   それにしても、mol-74いいな~。こんな良いバンドなのに、ほとんど知られていないなんて驚きですね。
   今の若い音楽シーンのレベルがよほど高いのか、音楽業界が下降気味なのか、それとも自分の音楽に対するアンテナの感度が上がったのか。……その全部な気もしますが。
   もっとmol-74とその音楽を、たくさんの人に知ってもらいたいです。