スピッツ「スピカ」感想

   カップリング集「花鳥風月」の3曲目に収録されています。
   また、「フェイクファー」からシングルカットされた「楓」と合わせて両A面シングルとしても発売されました。スピカが2曲目です。
   シングルジャケットは両A面シングルということで、2種類の形態で発売されました。一つは赤色の「楓」が表紙で青色の「スピカ」が裏面という「楓/スピカ」バージョンです。もう一つは青色の「スピカ」が表紙で赤色の「楓」が裏面という「スピカ/楓」バージョンです。
   新曲の「スピカ」が聴きたかったので、レンタル屋さんでは「スピカ」が表紙の方を借りて、MDにダビングした覚えがあります。収録内容は同じなんですけどね。

「スピカ」はとても好きな曲です。
   明るく優しくて、ゆる~く前向きなところがよいです。 ですます調でやわらかいタッチの歌声と、ボーカルをしっかり下から支えつつも自由で伸びやかなバンド演奏が、聴いていてとても気持ちいいです。
   ただ、最初聴いたときは、サビが盛り上がりきらない地味な印象と、ですます調の歌詞が「謝謝!」の二番煎じのように思えたのとで、”普通よりちょっと良い”くらいの感想でした。それが聴いてるうちに段々と良くなってきました。(まあ、スピッツの曲はだいたいそんな感じなのですが)
   なので、ファンの間で意外と人気のある曲と知ったときは嬉しくもちょっとびくっりした気持ちでした。

「スピカ」のイントロは、こんぺい糖のシャワーを浴びせかけるようなキラキラとしたギターのコード弾きから始まります。Aメロに入ってからのカッティングも小気味良く、リズムだけでうきうきさせてくれます。
   Cメロの「彼方へ」の歌詞のあとに続くギターソロ(ダブル?2本で弾く場合は何ていうんだろ)も心地よいです。夜の風をお供に、満点の星空を見上げながら歩いている気分になります。あるいは自転車で流れ星を追いかけていくような。さわやかですよね。

   歌詞もまた素敵なものが多いです。
   例えばAメロ「やがて来る大好きな季節を思い描いてたら ちょうどいいころに素敵なコードでものすごい高さに届きそうです」ーー”大好きな季節”というフレーズがかわいいですし、”コード”と”高度”を掛けているのも愉快です。

   他にもあります。「やたらマジメな夜 なぜだか泣きそうになる」は一人暮らしの部屋でいつも共感してました。2題目のサビの「割れものは手に持って運べばいいでしょう」のやわらかい感じ。「古い星の光……何も無かった それ以外は」のロマンチックなところ(これは恋愛という意味でも男のロマンという意味でも)。
   そして、最後の「幸せは途切れながらも続くのです」ーーどこを切り出してもいいですよね。

   さて、サビの始まりでは「粉のように飛び出す切ないときめきです」と歌っていますが、この「粉のように飛び出すときめき」というのが、初めて聴いたときからいまいちピンッときませんでした。
   サビの前に「君へ」と言っているので、”君に向かってときめきが飛び出していく”ってことなんですかね。蝶々の鱗粉がぶわーっと飛んでいくみたいな。んー、ますます、なんだかよくわかりませんね。
   どちらかというと、その次の「今だけは逃げないで君をみつめてよう」のところの方が、胸をムぎゅっとしめつけられるようで好きです。と書いた時点で、おまえ逃げてたなっていうのがバレバレですね。汗

「スピカ」は派手さはないけれど、ずっと心に残る歌だと思います。旅は続いていく、人生は続いていく、幸せも続いていく。いつ聴いても、ほんのりあたたかい気持ちに、そしてちょっと前向きにさせてくれます。

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   アニメ「ハチミツとクローバー」の挿入歌としても使われていて、竹本君が自転車で北海道まで一人旅をしたときに流れました。
   見せ場のシーンで「スピカ」のイントロがかかり、映像と音楽がぴったりマッチしていて、TVを観ながら、アニメのスタッフさん、わかってらっしゃる!と思わず拍手しそうになりました。