スピッツ「小さな生き物」アルバム感想

  「小さな生き物」は2013年9月に発売されたスピッツの14枚目のアルバムです。
  同じ年の5月に発売した先行シングル「さらさら」の手ごたえがすごく良かったので、楽しみに楽しみに待ったアルバムでした。
スピッツ「小さな生き物」

  実際に聴いてみても、文句なしの快心作で、スピッツ復活!!と心の中で叫びました。--と同時に、「復活」と感じたことに戸惑いも覚えました。え?これ以前のスピッツはダメだったの?って。
「スーベニア」「さざなみCD」「とげまる」はもちろん良かったのだけれど、自分に正直になってみると、まだまだ物足りない、スピッツはこんなもんじゃないという不満が心のどこかにあったのだと思います。
  その不満をがつんっとやっつけて、更に進化したのがアルバム「小さな生き物」なのでした。

「小さな生き物」がそれ以前の3作と違うところはどこだろう、あるいは、その3作と違って僕を強く惹きつけたものはなんだろう、と考えてみました。
  • 3~4分という短い演奏時間の中に凝縮された、シンプルで輪郭のくっきりとしたバンドサウンド。(アップテンポの曲もしっとりした曲も、バンドの音として聴かせてくれる)
  • 初期のスピッツに近いネガティブ(根暗?)で変てこりんな世界観。(強い太陽の光の下から、古代人の壁画の描かれた暗い洞窟のなかに引き戻された、とまではいわないまでも、落書きのある弱いランプの光に下に戻ってきた感じ)
  • それでいて、新しいことにも挑戦していてそれが軒並み成功していること(「野生のポルカ」「scat」「潮騒ちゃん」「エスペランサ」)
  あとはタイミングもよかったのかもしれません。プライベートでは、男の子2人が年子で立て続けに生まれて、育児に四苦八苦していた時期だったので、シンプルでアップテンポな気持ちのいい曲の多いアルバムはウエルカム!って感じでした。

「小さな生き物」は時間を持て余していた学生のころ以来と言っていいくらい、何度も何度も繰り返し聴きました。「さらさら」「野生のポルカ」「僕はきっと旅に出る」は、よく歌い、歌詞を覚えるくらいになりました。それもひさしぶりでのことです。(スピッツだけじゃなく、他の音楽にしても歌詞を覚えるくらい聴きこむということはいつの間にかなくなっていました。)
  音楽を聴いてわくわくしたり嬉しくなったりするという感覚からしばらく遠ざかっていたんだなぁとこのとき痛感しました。そして、それは人生の楽しみの半分くらいを無駄にしているなとちょっと大袈裟に考えたりもしました。
  仕事や育児が忙しくても、年をとっても、やっぱり音楽を楽しむことは忘れたくないですよね。

  そして、この楽しい気持ちのまま、この勢いのまま、「小さな生き物」のライブにも参戦できればよかったのですが、仕事が忙しすぎて、気がついたときにはファンクラブの先行予約の締め切りから一月も過ぎていました。
  ダメ元で、一般の電話受付も試してみたのですが、開始時間と同時につながったのにすでに販売完了となっていて、結局、このときのライブには行けませんでした。
   野生のポルカ、熱唱したかった!

  ところで、世間的な「小さな生き物」の評価ってどうなのでしょうか?むかし、ネットで気になって見てみたら、自分が興奮しているほどの熱のある感想がなかったように思います。
  また、「醒めない」の金沢公演のときに、田村さんか草野さんがMCで「『醒めない』、売れているので嬉しい。でも『小さな生き物』はあんなにがんばったのにさ……」みたいなことを話されていて、あれ?メンバーの中でも「小さな生き物」はあまり良い思い出がないのかしら、と思いました。
   僕は大好きなんですけどねぇ。

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  おすすめは「オパビニア」「さらさら」「野生のポルカ」「潮騒ちゃん」「僕はきっと旅に出る」です。