スピッツ「P」感想

 12thアルバム「さざなみCD」の8曲目に収録されています。
 フェイクファーでいう「楓」の位置づけにあたる曲だと思います。静かなところで目を閉じて聴きたくなります。


「電話しながら描いた いくつもの小さな花 まだここにある」という歌詞が新鮮です。
「電話」という小道具や、女の子との本当にあったやりとりをエピソードにしたような歌詞はこれまであまりなかったように思います。(「小さな花」がかわいらしいのがポイントですね)

 また、「ピー音で隠した 今じゃ当たり前の古いコトバ」もうまい。なれ初めのシャイなやりとりから、親しくなってごく自然に言い合えるようになった後までの二人の歴史が、この短いフレーズだけで想像できてしまう。しかも、「道を転がる」と続き、二人の結末を暗示している。

 サビについては、前半のすがすがしい感じ(「抱きしめたときの空の色……」)から一転して、後半では重く憂鬱な雰囲気(「再び会えたから話そうとするけれど何でだろ?」)に変わります。
 「知らぬ間に戻される 恥ずかしき炎」と言っているから、出会った頃の気持ちがよみがえってるんでしょうか。
 このまま思い出になるのか、思い出にはさせずにまたがんばるのか。再会した相手の方はどんな気持ちなのか。物語の続きを想像したくなります。

 ちょっとオトナなムードの歌だと思いました。