スピッツ「さざなみCD」アルバム感想 その2

 12枚目のオリジナルアルバム「さざなみCD」の感想の続きです。
 前回は話がかなり飛んでしまいましたが、「スーベニア」と「さざなみCD」の間で、自分にとってはいろいろな変化がありました。初めて彼女ができ、初めて二人でライブを見に行って。恋愛面で今までにない経験をしました。
 そうした環境の変化を経ての、3年ぶりのスピッツは当時どんなふうに映ったのでしょうか?
スピッツ「さざなみCD」

ず、いつもスロースターターのスピッツにしては、アルバムを聴いてすぐに歌がすんなりと入ってきました。キャッチーというか、すごいポップで、聴きやすい。
 角がとれた?丸くなった?--それがいいかどうかはわかりませんが、最初の印象はとてもよかったです。

ルバムの構成を見ると、タイトルに「さざなみ」とあるだけではなく、ちゃんと全体に「海」や「水」を感じさせる曲が配置されていて、よくできているなぁと思います。
 1曲目の『僕のギター』の最初の歌詞に「霧雨」があり、『群青』では「海」と「波」、そして『トビウオ』『漣』と続きます。ラストの『砂漠の花』で、海に流れ着いた水が雲になって、遠くの砂漠に雨となって落ち、花を咲かせる。「まためぐり会う時まで」と未来へと続いている。
 おお、物語になっている!
 さわやかだし、わかりやすいし、アルバム全体の統一感もあります。

だ、そのわかりやすさが逆に飽きやすさにつながったのか、最初の印象が良かったわりには、アルバムのリピート率はあまり高くありませんでした。
 ロック色が薄かったのもいまいち評価が伸びなかった理由かもしれません。
 いま歌詞を読み返してみると、「魔法のコトバ」「桃」なんてあのころの自分とぴったり重なっていて、もっと惚れ込んでいても良さそうなものなんですけどね。 

の点では、以前だったら、草野マサムネの歌のなかに出てくる女の子に焦がれたり、自分の恋とスピッツの歌とを重ねたりしていたのに、このアルバムではそういうことがほとんどありませんでした。
 初めて彼女ができて世界がカラフルに変わって、だからこそ見える「今までと違うスピッツの世界」みたいなのがあればよかったのですが、あまり思い出せない。
 実際に両思いになったらそんなもんだよ、というのもあるのかもしれませんが、前作スーベニア同様に自分の気持ちとスピッツの歌とがうまく重なっていない時期だったように思います。
 また、収録されている歌自体も、むかしのように女の子を想像する(妄想する)ようなものが少なかったというのもあり、自分の空想と草野マサムネの世界とを結び付けづらかったのかもしれません。
 ちょっと残念。

すすめは、シングル3部作と、「僕のギター」「砂漠の花」です。特に、「僕のギター」は大好きで、このアルバム一番の収穫でした。
スピッツ「さざなみCD」(Amazon)

  最後に蛇足を。
 自分の人生のなかで恋人がいた期間は3年しかなく、そのときに発売したスピッツのアルバムはこの「さざなみCD」一枚切りなのですね。
 そう思うと自分の人生のなかで、なんと貴重なアルバムなんだろう!と思いました。

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