スピッツ「恋は夕暮れ」感想

  休日の夕方、ランニングに出ていたら、街並みの切れた向こうの空がとても綺麗で、そのときは「月に帰る」を聴いていたのですが、家に帰ってから、無性に聞きたくなったのが「恋は夕暮れ」でした。
  今日は5thアルバム「空の飛び方」の5曲目に収録されている「恋は夕暮れ」の感想です。

  初めて聴いたときは、恋をテーマにしたスピッツらしい青臭い歌だなぁと思いましたが、スピッツを好きになっていろんな曲を聴くようになると、意外とこういう詩情豊かな歌は少ないことに気づきます。恋について赤裸々に歌っていて珍しい一曲です。

  歌の中で「恋は~」と恋を6回も例えています。そのどれもが思い当たる節がありまくりで、十代のころは、切なくなるというよりは、胸にぐさぐさ刺さって悶え苦しみ、畳の上を転がりまくってました。
  ちょうど片思いをしていましたし、その子は近くにいるのに(心の距離は)ものすごく遠くてダメダメでしたし。「恋は届かない悲しきテレパシー」とかね。もうほんと悲しくなります。
  他にも「恋は迷わずに飲む不幸の薬」とか「恋はささやかな悪魔への祈り」とか。わかるわー、わかるわー、でした。
……こうして見ると、印象に残っている詩がどれも痛くて辛いものが多いですね。片思いをこじらせていて、楽しい恋をしていなかったからかな。

  三十代になって読み返してみると、また印象が違ってきます。当時はそんなに響かなかった言葉が今は情緒があり美しいと思えます。
  例えば、冒頭の「恋は昨日よりも美しい夕暮れ」。例えば、サビの「君のいたずらで ただ朱く形なき夢を染めていくような夕暮れ」。どちらも「夕暮れ」が入ってますね。
 若いころは夕暮れに感傷とか感じなかったのかもしれません。今は、これまでに見てきた様々な夕暮れの光景と重なって、これらの詩がとても美しく響きます。(登山して見た日本アルプスの夕景とか、自転車の旅で見た夕焼けの海とか)
 また十年たったら、違う景色が見えるのかもしれないですね。