スピッツ「迷子の兵隊」感想

 5thアルバム「空の飛び方」の4曲目に収録されています。
 スピッツのレビューサイトを調べてネットをうろうろしていたら、「いまいちなスピッツの曲」みたいなまとめ記事にたどりつき、そのなかで「迷子の兵隊」の名前が多数上がってました。たしかに、初見ではちょっと苦手と思う人が多い曲だと思います。僕も苦手でした。

苦手だけど妙に気になる曲

  この曲については今でも覚えている印象的なエピソードがあります。
 高専のころ、中学時代の同級生が彼の姉から「空の飛び方」のアルバムを借りて家に遊びに来ました。
 当時は僕もまだスピッツのファンではなく、「空の飛び方」も1,2度聴いたことがあるレベルだったと思います。友達の方も特にファンというほどではありませんでした。

 二人でラジカセの前に座って、アルバムを1曲目から順々に聴きながらおしゃべりをして、最後の曲まで聴き終わった後に、彼が「このアルバムのなかでは迷子の兵隊がけっこう好きな曲だ」と言いました。それを聞いて、『えっ、そこ!?』とびっくりしました。彼が好きな理由は、サビのメロディが良いということでした。(彼は全般的にスピッツの歌詞には興味がなかった)

 好みはひとそれぞれだと思うのですが、シングル曲以外にも「たまご」や「不死身のビーナス」「ラズベリー」など良い曲があるのに、なぜ「迷子の兵隊」なんだと。それ以来、この曲は好きでもないんだけど妙に気になる曲、となりました。

 あれからずいぶん年月がたち、あらためて、この曲を聴いてみると、当時ほどの苦手意識はなくなり、彼が良いと言っていたサビの良さが少しわかるようになりました。
 ねちねちとした、からみつくような、まとわりつくようなメロディがクセになります。ちょっとしつこいくらいのサビのリフレインもまたよいです。中毒性があります。

 思うに、「これが嫌い」という意見よりも、「これが好き」という意見の方が、そのときはぴんっとこなくても、あとあとタメになります。彼がまさかの「迷子の兵隊」推しをしなければ、僕もそれから二十年近くたったあとに、聴きこんでこの曲の良さを再発見するなんてことはなかったと思いますので。

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 最後に余談ですが、どういうわけか、僕はこの歌をずっと蟻の歌だと思ってました。なぜか兵隊と聞いて、軍隊蟻みたいな大量に押し寄せてくる蟻の群れをイメージしていたのです。でも歌詞にはどこにも蟻なんて出てこないんですが。(出てきてせいぜい、サソリ。)
 軍隊蟻のぞわぞわっとしたイメージがこの歌を苦手にしていた理由の一つだったのかもしれません。