スピッツ「花鳥風月」アルバム感想


「花鳥風月」はシングルのカップリング曲を中心に集めたアルバムです。同封されていた対談集によると、初めは「裏街道」というタイトル案もあったようです。
 買う前は、A面に落ちたB級品や、シングルにできないへんてこな曲ばかりを寄せ集めたごちゃごちゃしたアルバムなんじゃないかと心配していましたが、そんなことはありませんでした。
 B面集だと言われなければ気づかないくらい良曲がそろっており、結果的にはリピート率のかなり高いアルバムになりました。

 おすすめは「流れ星」「スピカ」「俺のすべて」「猫になりたい」「おっぱい」です。
スピッツ「花鳥風月」

  アルバム「花鳥風月」が世に出た1999年3月に、僕は名古屋の大学に進学し、一人暮らしを始めました。高専から編入だったのでそのとき20歳でした。

 知っている人の誰もいない街での新しい生活には不安もありましたが、それ以上に初めての都会にワクワクしていました。
 季節は春で、外に出ると、明るい空の下、何もかもがきらきらと輝いて見えました。
 どこまでも続くビルや商店街、大きくて綺麗な道路。高架下や公園ではいつも誰かが音楽を奏でていました。
 引っ越してから講義が始まるまでの一週間のあいだ、昼間はあちこち散策していろんなものを見て回って、夕方に下宿先に戻って慣れない料理を作って、顔をしかめながら夕食を食べて、という日々を過ごしました。
 毎日へとへとに疲れたけど、新鮮な喜びにつつまれていて、幸せな期間だったように思います。

 とはいえ、夜になると一人の部屋は、耳の奥がきいぃんとなるくらい静かで、心細かった。
 家族と離れたことは苦ではなかったのですが、5年間ずっと同じクラスで過ごしてきた高専時代の友達と別れて、新しい環境でやっていけるかが不安でした。(実際、大学にはうまくなじめず、1年間はひとりぼっちでした。)

 そんな新しい生活の真っただ中に聴いていたのが発売されたばかりのスピッツの「花鳥風月」でした。
 一人暮らしを始めて最初に買ったアルバムということで、個人的に思い入れのあるアルバムです。
「花鳥風月」を聴くたびに20歳の僕が感じていた孤独と希望を思い出します。
スピッツ「花鳥風月」(Amazon)