【レビュー】スピッツ「ハチミツ 30th Anniversary Edition」|年月が過ぎても色褪せない金字塔

『ハチミツ』発表30周年おめでとうございます!

(……といっても、年をまたいで31年目になっちゃいましたが、そこはご愛嬌ということで!)


 感想を書こうと思いつつ、スピーカーの前でじっくり聴き入っているうちに、あっという間に時間が過ぎてしまいました。

【レビュー】スピッツ「ハチミツ 30th Anniversary Edition」

はじめに:30年という月日

『ハチミツ』が発売された1995年。当時、僕はまだ10代で、高専(工業高等専門学校)に通う学生でした。


 あの大ヒット曲「ロビンソン」を初めて聴いたときの衝撃は、今でもはっきりと覚えています。 美しいメロディ、どこか不思議な引力を持つ歌詞。そして、ナチュラルで柔らかい草野さんのハイトーンボイス。

 まるでふわふわと空に浮かんでいるような、未知の音楽体験に「すごいのが出てきたぞ」と驚きを隠せませんでした。


30周年記念盤の概要

 今回の記念エディションは、オリジナル盤の11曲に加え、近年のライブ音源4曲をボーナストラックとして収録した全15曲。マスタリング界の巨匠エミリー・ラザーによる最新リマスタリング音源で蘇っています。

【レビュー】スピッツ「ハチミツ 30th Anniversary Edition」
ライブ映像やMVの入ったBlu-rayも付属しています

オリジナル盤と30周年記念盤の比較

 まず、30周年盤は単純に「音圧(ゲイン)」が高いです。 

 人間は音量が大きいと「音が良くなった」と錯覚しがちなので、音量をなるべく揃えたうえで、新旧盤をじっくり聴き比べてみました。


1. 定位感とレンジの広がり

 全体として左右のステレオイメージが広がりつつ、センターの定位(ボーカルやドラムの芯)がより強固になったと感じます。

 個々の楽器のセパレーション(分離)が良く、それぞれの音が埋もれずに主張してきます。


2. アタック感と空気感の変化

  • 「ハチミツ」:冒頭のシンバルとギターが勢いよく押し出され、アタック感が増しています
  • 「ロビンソン」:象徴的なアルペジオがよりクリアになり、楽曲の透明度が一段上がった印象です
  • 「君と暮らせたら」:12弦ギターのきらびやかなメロディが、より艶やかに、美しく響きます


3. 草野マサムネの「息遣い」の再発見

 特に驚いたのは、草野さんのボーカルの解像度です。 これまでは「淡々と丁寧に歌う、天性の歌声」という印象でしたが、今回のリマスタリングではその表現力の豊かさに改めて気づかされました。

 例えば「ロビンソン」の「走る君を~」の「は」の入り方。愛しさを込めたような、包み込むような繊細な息遣い……。以前はわからなかった「歌の深部」に届いたようで、初めて聴いたときの「ぞくっ」とした感覚を30年ぶりに体験しました。


まとめ:これからの10年

 久しぶりにアルバムをリピートして感じたのは、この作品が「全く色褪せていない」という事実です。


 多感な10代に出会ったという思い出補正もあるでしょう。

 しかし、その補正を差し引いても、「ロビンソン」はやはり至高の名曲であり、『ハチミツ』というアルバムはスピッツの長い歴史の中で、若さとキャリアが最も美しく交差した金字塔なのだと確信しました。


「ロビンソン」の歌詞(川原の道を自転車で〜)を聴くたび、僕の脳裏に浮かぶのは地元・金沢を流れる犀川です。片町で仲間と飲んで酔っ払い、芝生に座って夜風に当たりながら語り合った日々。

 そこに「走る君」はいなかったけれど(笑)、僕にとっての「ハチミツ」はあの川沿いの空気そのものです。


 そしてかつて「君と暮らせたら」を聴きながら、「可愛い年月を」一緒に暮らせる女の子に出会えるのだろうかと漠然とした不安の中にいた少年は、今や3人の息子の父親になりました。

 ずいぶん遠くへ来たような気もします。でも、この色褪せない音楽を聴いていると、またこれからの10年、変わらずにやっていけそうな気がしてくるのです。


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