【感想】ロジャー・テイラー「Outsider」|穏やかで激しい!衰え知らずな一枚

    先日、NHK-FMの「ディスカバークイーン」のなかで、クイーンのドラマー「ロジャー・テイラー」の最新アルバムの楽曲がオンエアされました。

   その曲がかなり良かったのでついついCDを買ってしまいました。

   それが2021年発売の「アウトサイダー」です。


   ロジャーさんは現在72歳です。

   紙ジャケットの裏やアルバムの歌詞カードのラストに現在の写真が載っています。

   クイーンのころのやんちゃな感じの顔は見慣れていますが、お年を召された今のお顔をじっくり拝見したことがありませんでした。

   あらためて見てみると、

   おお、白髪白髭が似合っていて渋い!

   クラシックの大家みたい。

   年をとってもかっこいいですね。

   自分もこうありたいものです。


* *

   さて、アルバムの感想です。


   アルバムを買う前は、ロックダウン中に製作し、ロジャーさんも高齢ということで、静かな淡々とした内容かなーと思っていました。

   その予想は半分は当たっていました。「Oulsider」は全体的に穏やかな印象があります。

   そうした印象を受ける原因は1曲目の「Tides」と本編ラストの「Journey's End」が静かで美しいからだと思います。

   付属の解説のなかにも「円熟」「秋の季節」という言葉が出てきていましたが、それも同意です。


   しかしただ穏やかなだけではなく激しさや荒々しさもあります。

   ワクワクした気分にさせてくれる曲もしっかり入っています。

   ラジオで流れてかっこいいと思い僕がこのアルバムを買うきっかけとなった③「More Kicks - Long Day’s Journey Into Night...Life」や⑦「 Gangsters Are Running This World - Purple Version」などです。

   ③はロジャーさんが「どんちゃん騒ぎ」と称しているとおり、ホーンセクションも加わったアウトロが痛快ですし、⑦はとにかくハードです。

   カバー曲の⑨「The Clapping Song」もチキチキ鳴っているハイハット(?)の音が愉快ですし、リミックスの⑭「London Town – C’mon Down」もクラブミュージックっぽい踊れる感覚が良いです。


   そして静かな曲でもリズムが心地よいです。

   ⑥「Gangsters Are Running This World」、⑧「Isolation」など。

   これはロジャーさんが天性のドラマーだからかもしれません。



   歌声はどうでしょう?

   クイーン時代のような金属質のハイトーンボイスこそ聴けませんが、70代とは思えない太くと力強い声です。

   ハイトーンの代わりに渋さが加わり、バラードもハードロックも魅せてくれます。

   ドラムもボーカルも超一流ってすごすぎませんか!?


   ということで、「Outsider」はキャリアを重ねた円熟感はありますが、衰えを感じさせない、穏やかさも激しさも備えたロックアルバムです。

   めっちゃかっこいい!

   こんな70代になりたいものです。


   個人的なおすすめは①「Tides」、③「More Kicks - Long Day’s Journey Into Night...Life」、⑦「 Gangsters Are Running This World - Purple Version」、⑧「Isolation」、⑨「The Clapping Song」、⑪「Foreign Sand - English Mix」、⑫「Journey's End」です。

   ①の美しい旋律と繰り返される「My only friend now」というフレーズと波の音は、一気に作品の世界に引き込んでいく魔力があります。

   ③は今作の中で一番ロックンロールっぽい。クイーンを彷彿させます。やっぱりこういう曲が似合ってますね。

   最後の「Journey's End」は「死」を意識させる歌ですが、不思議な落ち着きがあります。美しいような、怖いような、でも決して不安ではないような。よくわからないです。でも70代に入ったロジャーにしか書けない境地のようなものを感じます。

   静かで美しい①と⑫でサンドウィッチしているのが構成としても綺麗です。さすが。


   なお、⑪はX JAPANのYOSHIKI作曲です。

   ロジャーさんが言うには原曲はオーケストラアレンジでもっと壮大な曲だったのですが、今作は全く違うアレンジにするためにボーカルとアコギのみにしたそうです。

   本作しか聴いてないので比較はできませんが、僕はこのアレンジの方が好きですね。歌の良さが引き立っていると思います。


   ⑧「Isolation」のMVと⑫「Journey's End」のMVがあったので貼っておきます。



   ⑫「Journey's End」のMVは音楽の美しさに映像の美しさが重なって全くの別次元に昇華してますね。
   これは本当に長い旅(人生)の終着感があります。圧巻。

* * *

   最後に。

   今回僕が買ったCDは国内盤です。

   これにはロジャーさん本人の全曲解説がついています。(もちろん和訳あり)

   さらにボーナラストラックが2曲収録されていました。(どちらもよかったです)

   なので買うなら国内盤が良いと思います。


   もっともサブスクでもボーナストラック込みで普通に配信されているので、とりあえず興味を持ったらサブスクで聴いてみるのがてっとり早いです。


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