スピッツ「おっぱい」感想

   カップリング集「花鳥風月」の12曲目に収録されています。

   もともとはインディーズ時代の曲で、「花鳥風月」発表以前からそのびっくりなタイトルは耳に入っていて、一度は聞いてみたいものだと思っていました。「花鳥風月」に収録されると知ったときはすごく嬉しかったです。
   '99年当時の雑誌の記事のなかで、ミスチルの桜井さんが「スピッツのなかで好きな曲は?」と聞かれて「おっぱい」と答えたというエピソードが載っていました。それだけ「おっぱいがすごい歌だ」というべきか、「他になかったのかよ」と突っ込むべきか。
   奇抜な(むしろストレートな?)タイトルに負けないくらい中身も名曲だと思います。

「おっぱい」を語るとき(いったい、何を言ってるんだか)、大きく3つの部分に分かれると思います。

   1つ目は、メロディです。
   綺麗で、とてもキャッチ―です。ついつい口ずさんでしまいたくなります。実際、今でも朝の通勤時に自転車に乗りながら歌っています。Aメロはキーも高くないのでいい感じなんですよ。「♪やっと一つわかりあえた そんな気がしていた」

   2つ目は、Aメロの歌詞です。
   Aメロは3回あるのですが、どれも、ひとりぼっちで部屋の中に閉じこもって見ている夢や幻、あるいは強烈すぎる妄想のように聞こえます。
「わかりあえた」とか「涙をなめあった」とか言っていますが、本当にそんな「君」はいるのか疑いたくなります。脳内彼女なのではないかと。3回目のAメロでは「一人悩んでいた」なんて言ってますし。この歌の主人公君は孤独なイメージが強いです。
   だけど、そこがたまらなくいい。ひとりぼっちの心にぎんぎん響きます。童貞で孤独な学生には「おっぱい」の歌詞はまさに至高です。古いアパートの部屋で、孤独を噛みしめるように、あるいは孤独を紛らすように、よく歌っていました。「♪誰の言葉も届かなくて 一人悩んでいた」

   3つ目は、サビの歌詞です。
「君のおっぱいは世界一」というどストレートな歌詞。更に「もうこれ以上の生きることの喜びなんか要らない」と言いきっちゃいます。
   それほどのおっぱいとは一体どんな形なのか一度見てみたいものですが、その持ち主が主人公君の彼女なのかはあやしいところです。「あしたもここで君と会えたらいいな」と可愛くまとめていますが、なんとなく、下校時に校門の陰に隠れて待っていたりしそうです。ん、ちょっと怖いですね。

   ただ、このむき出しのどストレートさはエロさを通り越して、むしろ清々しささえ感じられます。世界一のおっぱいは妄想なのか、現実なのかはわかりませんが、生きる喜びを与え、明日への力の源となっているのは間違いありません。
   そう、おっぱいに罪はありません。エロくだってありません。おっぱい、最高!!(ほんと、何を言ってるんだか)
   とはいえ、恥ずかしいし、おかしな人と思われたくないので、通勤時とかついつい歌ってしまったときは、サビの最初はごにょごにょ言って、「あしたもここで君と会えたらいいな」まで飛ばしてます。キーも高いですからね。町なかで「おっぱいおっぱい」言っているうえに、ひっくり返っておかしな声を出していたら、ほんとの変態さんになってしまいます。

   草野マサムネも罪な人です。ついつい歌ってしまうAメロと、こんなの歌えるかい!というサビ(歌詞的にも、技術的にも)とをくっつけてしまうなんて。たぶん、「君のおっぱいは世界一」と歌って許される日本男子なんて草野さんくらいですよ。

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   長男が春に小学校に入学して覚えてきた遊び(?)があります。「♪あっぱい、いっぱい、うっぱい、えっぱい、その次は?」ーー答えは「おっぱい」

   ちなみに自分が小学校のときにはこんなのがありました。A君「『いっぱい』の『い』を『お』に変えて言ってみて」 B君「おっぱい」 A君「外れ―。正解は『おっぱお』。やーい、B君のエッチ~」
   男子小学生って、ほんとなんていうか、いつの時代でも、がっかりですよね(笑)……まあ、うん●とかち●ち●とかおっぱいとかって言っている間は、理解の範疇で、かわいらしいものなのかな。