10月8日発売の羊文学の5thフルアルバム『Don't Laugh It Off』の感想です。
羊文学が担当した夏アニメ『サイレント・ウィッチ』のオープニング/エンディング曲がどちらもすごく良かったので、アルバムの方も楽しみにしていました。
実際に聴いてみると期待以上の仕上がりで、ここ2週間ずっとリピートしています。
個人的には、『Don't Laugh It Off』は2025年を代表する一枚になりました。
アルバム全体の感想
今作を聴いて最初に感じたのは、サウンドと歌詞のバランスの良さでした。
ひとつ前のアルバム『12 hugs (like butterflies)』は、サウンドはかっこいいけれど歌詞があまり響いてこなかった印象がありました。
それ以前の『光るとき』や『マヨイガ』『あいまいでいいよ』のような、歌詞にグッとくる瞬間が少なかったというか。
でも今回は、ハッとする歌詞(「Fell」や「未来地図2025」など)もあれば、メロディが心地いい曲(「tears」や「ランナー」など)、そしてサウンドがかっこいい曲(「そのとき」「声」など)もあり、個人的なツボをぐいぐい押してくれる内容でした。
各曲の感想
では簡単に1曲ごとの感想を書きます。
1.そのとき
今作は重く静かに始まります。
僕はオープニングナンバーがスローで暗めなのは実は苦手で、1曲目が暗いとそのアルバムを手に取る気力が半減してしまうタイプです。
でもこの曲はなぜか苦手じゃない。
不安や不穏さのなかに、不思議と落ち着きを感じるんですよね。
昔テレビか何かで聴いた“胎内音”のような低いごろごろとした響き。暗いけれど、どこか安心する感じ。
「その呪いが終わるように 悲しみさえ踊るように」という歌詞もとてもいいです。
2.いとおしい日々
重い「そのとき」と、明るく軽やかな「Feel」をつなぐ中間的な曲。
「穴の中から出てきたぞー!」という感じの勢いが好きです。
3.Feel
初めて『光るとき』を聴いたときのような鮮烈な感動を受けました。
ギターをかき鳴らす系の曲はやっぱりワクワクしますね。
軽やかに舞うようなサビの浮遊感が心地よく、聴くたびに気分が明るくなります。
「思うように羽ばたいて 日々はもっと輝いていいと あなたが私に教えてくれたの」ーーこの歌詞が特に好きです。アニメ『サイレント・ウィッチ』の物語ともぴったり。
アニメ二期、楽しみにしています。
(TVアニメ『サイレント・ウィッチ 沈黙の魔女の隠しごと』OP主題歌)
4.Doll
スピード感のある曲。
「私はあなたの可愛い子猫」とあえて言っちゃうところに昭和っぽさがあって好きです。
5.声
単体で聴いたときはピンとこなかったのですが、アルバムの流れの中で聴くと一気に存在感が増しました。
まるで荒野を吹き荒れる風の中を歩いていくようなロック感。めちゃくちゃかっこいい!
特にサビに入る瞬間の「あなたが呼んでる 声が……」の“あなた”の部分の歌声が好きで、聴くたびにゾクッとします。
(ドラマ『119エマージェンシーコール』主題歌)
6.春の嵐
タイトルは春だけど、聴くと晩秋のような切なさを感じます。
「わたしはそれを取り出して 涙でまた水をやって ありがとうって抱きしめてやる」
この一節が胸に刺さります。
7.愛について
個人的にちょっと一息つく感じの歌。
8.cure
落ち葉が舞う秋のカフェテラスで、コーヒーを片手にぼんやり聴きたくなる曲。地味だけど好きです。
9.tears
映画『かくしごと』の主題歌。
チェロの響きが曲全体を優しく包み込んでいて、とても味わい深いです。
10.ランナー
疾走感があって気持ちいい!
僕自身ランナーなので、こういう曲は自然とテンションが上がります。
「走るー♪」のフレーズに元気をもらえます。
そして、ここからのアルバムの盛り上がりがまたいいのです。
11.未来地図2025
未来への希望を感じる曲。イントロからすでにきらきらしています。
じわじわと盛り上がって、最後に一気に駆け上がる展開が最高です。
「いつか、きっと寝ても覚めても忘れらんないような 素晴らしい未来が君を待つように」ーーこのフレーズが特に好きです。
「忘れられない」ではなく「忘れらんない」と少し砕けた言い方をしているところが、自然体で未来を信じている感があっていいです。
(TAKANAWAGATEWAYCITY未来体験シアターオリジナル楽曲)
12.Burning
この曲も「声」同様、「推しの子」のEDとして単体で聴いたときはそれほど印象に残らなかったのですが、アルバムのラスト近くに置かれることで一気に化けました。
アルバムマジックとでもいうんですかね。やっぱり好きなバンドはアルバムで通して聴くのが一番です。
(TVアニメ『【推しの子】』第二期ED主題歌)
13.don’t laugh it off anymore
エピローグのような小品。
柑橘系の甘酸っぱさが口の中に広がるような、きれいな終わり方です。
まとめ
おすすめは①そのとき、③Fell、⑤声、⑨tears、⑩ランナー、⑪未来地図2025 、です。
重い曲、明るい曲、静かな曲、ロックな曲と振り幅は大きいのに、どの曲にも「これは羊文学だ!」とわかるサウンドが通っていて、アルバム全体としてまとまりを感じます。
これまでの羊文学のアルバムの中で、僕は今作がいちばん好きです。
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