スピッツ「スーベニア」アルバム感想

 2005年1月発売の11枚目のアルバムです。

 骨太で力強いサウンドは、ロックバンドスピッツが健在していることをしっかりとアピールしていています。
 明るくポジティブな名曲「春の歌」から始まり、ライブ映えのする激しい曲調の「甘ったれクリーチャー」「ほのほ」「ワタリ」、歌謡曲のような「正夢」「会いに行くよ」、レゲエ調(と草野さんが言っていたような)の「自転車」と、バラエティに富んだ佳作です。
 しかし、発売したタイミングが悪かったせいか、僕のなかでは、スピッツの数あるアルバムのなかでは、エアポケットのように思い出の少ないアルバムになってしまいました。
スピッツ「スーベニア」

 アルバムの発売したころ、僕は横浜に住んでいました。すでに社会人になっており、2003年から2005年まで親会社のある横浜に出向していたのです。大学時代に続く一人暮らし第2弾です。
 当時は、毎日0時過ぎまで働いて、家に帰ると1時を過ぎていて、1時間だけ音楽を聴いたりアニメを観たりして自分の時間を過ごすと、渋々寝て、嫌々朝起きてシャワーを浴びて出勤して、という超多忙な生活を送っていました。

 週末になると、横浜線から菊名乗り換えで東横線に乗って渋谷に行ったり、あるいは近くの町田に行ったりして、一人でぶらぶらとCDショップやレコード屋や本屋を巡っていました。学生時代から変わらず、恋人もなく、一人の生活は続いていました。良くも悪くも孤独を謳歌してました。

 このころ、音楽の趣味はスピッツから離れつつありました。
 トランスを中心としたクラブミュージックにはまり、バックパックにテントを詰めて、よくレイブに行くようになりました。夜通しで踊って朝を迎えるのは何とも言えない恍惚感と開放感があり、ライブハウスやコンサートホールにはない感動を味わいました。

 また、町田のCD屋で紹介されていたアジカンやメレンゲのインディーズアルバムにべた惚れし、ロックでもスピッツ以外のバンドを多く聴くようになっていました。
 「ソルファ」(アジカン)の「振動覚」から「リライト」、「君の街まで」までの神がかった展開や、「少女プラシーボ」(メレンゲ)のPOPで切ないバンドサウンド。
 東京・横浜の華やかさに目移りしてふらふら彷徨うように、新しい音楽に心が引かれていきます。

 そんな時期に発売されたこともあって、「スーベニア」の当時の評価はあまり良くありませんでした。
 「正夢」や「会いにいくよ」ではストリングが目立っているのが邪道に思えたし、後半(10曲目以降)がグダグダして、統一感に欠けているように思えました。

 いま聴くと、冒頭にも書いたように、力強いバンドサウンドで、バラエティに富んでいて、とても聴きごたえのあるアルバムなのですが、そのときの求めていたもの違っていたり、気持ちがずれていたりしたせいで、聴きこむことができませんでした。せっかくのスピッツの新譜なのに残念な話です。

 残念といえば、アルバムツアーではせっかく、地元のホールで前から2列目という良い席が取れたのに、仕事で行けず、母親にチケットを譲ったという残念な思い出もあります。「春の歌」を生で聴きたかった!
スピッツ「スーベニア」(Amazon)
  おすすめは「春の歌」「ワタリ」「恋のはじまり」です。また、2015年のGO!GO!SCANDINAVIAで聴いて以来、「甘ったれクリーチャー」も好きです。