力強い言葉と、やさしい灯 ― スピッツ「灯を護る」を聴いて思ったこと

 今週ついに、スピッツの新曲「灯を護る」が楽曲・MVともにフルで配信されましたね。

 僕はサブスクで繰り返し何度も聴いています。スピッツらしいフレーズを散りばめながらも、新しい風を吹き込んでいる曲だなと思いました。


 たとえば「モノクロの裏道」や「落書きみたいに消されてく」「指先も汚れたままで」「錆びついたドアノブ」など。

 世界の暗い部分の描き方が、いつもの草野さんらしいです。


 そして「密かにともるこの可愛い灯を護ろう」という歌詞。

 これは往年の名曲「スカーレット」を思い出させて、思わずニヤリとしてしまいました。

 「可愛い灯」という表現も優しくてあたたかいですし。


 一方で、サビの言葉の密度の高さは最近のスピッツらしいなと思います。

 これでもかというくらい言葉を詰めてきていて、ぐいぐい押してくる。

 アニメの主題歌ということもあって、サウンドもサビのフレーズも、言葉の勢いもすごくパワフル。

 「攻めてるなー」と感じます。そんなところに、新しいスピッツを感じました。


 数日聴いてみて、個人的に「好きなところ」と「ちょっと苦手なところ」を挙げると――


好きなところ:

・冒頭の、どんどんと鳴る太鼓(?)の音が冒険心をくすぐってワクワクする

・1回目のサビ後、前のめりに入ってくる間奏がかっこいい

・最後の「護ろう おー おー おー」が遠吠えのようにも、ろうそくの灯が揺らめくイメージのようにも聴こえて好き


苦手なところ:

・後半でサビの歌詞が重なる部分が、ちょっとせっかちに感じる

・歌詞が全体的にポジティブすぎる、かも?


 まだ聴き込み途中ではありますが、今の感想としては「ちょっと歌詞が強すぎるかな」と。

 たとえば「越えられない柵を越えていく」など。

 僕は“高い壁を乗り越えていく”的な歌詞が少し苦手なんですよね。

 そういう気分じゃないときに聴いていると、ちょっと疲れちゃうというか。


 「正解はこれじゃないのかも やり直しながら進もうか」や「下向かずにすぐ起き上がる」も同じ系統かな。

 こういう“力強く前向き”な言葉が続くと、ちょっとしんどく感じてしまうんですよね。(個人の感想です)


 僕としては、「美しい鰭」の「流れるまま流されたら 抗おうか 美しい鰭で」くらいのバランスがちょうどいい。 「そろそろ重い腰を上げてやりますか、よっこらしょ」みたいな。

 そういう“斜に構えた感じ”とか、“世界を斜めから攻めるスタンス”が、「灯を護る」にももう少し欲しかった気がします。


 つまり――草野さんにしては、今回は少しストレートすぎるのかなと。

 そこが、ちょっと惜しい。ひねくれ成分、2割増しでもよかったかも。


 でも、だからこそ最後の「おー おー おー」が良いんですよね。

 言葉を超えた、言語の外にあふれた気持ちが、あのコーラスに全部乗っているようで。

 ストレートな中にも、やっぱり“スピッツらしい余白”がある。


 ――そんなふうに感じました。


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